障がい者雇用担当になったら知っておくべき「合理的配慮」とは?

こんにちは。サンクスラボ株式会社 サテライトラボ担当の久米川です。
合理的配慮という言葉をご存知じでしょうか?聞きなれない言葉だと思いますが、もしあなたが障がい者雇用の担当者になったばかりなら、早めに意味を理解しておきましょう。障がい者雇用において「合理的配慮の提供」は、法的義務として定められているからです。
では、合理的配慮とはどのようなものなのでしょうか?今回は、なぜ提供する必要があるのか、どこまで、どのように提供するのかなど、担当者なら知っておくべきポイントをまとめました。

障害者雇用における、合理的配慮の提供。

1.合理的配慮とは?

合理的配慮とは、障がいのある人が、障がいのない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて生まれる支障を取り除くための、個別の調整や変更のことです。
わかりやすい例をあげると、口頭での指示が難しい知的障害の社員には、 写真や図入りのマニュアルを作成したり、聴覚過敏な発達障害の社員には、 耳栓やパーテーションの設置したりすることです。

合理的配慮という言葉が広く知られるようになったのは、2006年に国連総会で採択された「障害者権利条約」にて定義されたことがきっかけです。条約の中で「合理的配慮をしないことは、障害を理由とする差別である」ことが明示されました。日本でも、条約の批准のために法整備がなされ、2013年に障害者雇用促進法が改正されました。そこで、事業主に対し、障がいがある人への合理的配慮の提供が義務付けられました。

業務を遂行する能力があるにも関わらず、障がいがあることで、他の社員と同じスタートラインに立てないことのないよう、企業は公平な職場環境を整える必要があります。

2.法律で義務づけられた内容とは?

障害者雇用差別解消法障害者雇用促進法の2つの法律の中に、提供が義務付けられた合理的配慮の内容について記されています。

  • 障害者雇用差別解消法
    • 対象分野…雇用分野以外のあらゆる分野
    • 提供義務…国・自治体は法的義務
    • 民間事業主は努力義務
  • 障害者雇用促進法
    • 対象分野…雇用分野に特化
    • 提供義務…国・自治体、民間事業主ともに法的義務

障害者差別解消法における合理的配慮は、雇用分野以外が対象となっているため、民間事業主は努力義務としています。
一方で、障害者雇用促進法は雇用に特化した法律で、雇用期間が対象となっており、その期間中の配慮提供は法的義務であるとしています。合理的配慮の提供は事業主に義務付けられているため、必要な費用は個々の事業主が負担することが原則です。ただし、「過重な負担」になる場合は、その限りではありません。

3.「過重な負担」の範囲とは?

合理的配慮に関わる措置が、事業主に「過重な負担」がかかる場合、合理的配慮を提供する義務はないとしています。「過重な負担」に当たるか否かは、下記の要素を考え合わせながら、事業主が判断することになります。

  • 事業活動への影響の程度
    • 合理的配慮の提供を行うことにより、生産活動やサービス提供への影響の程度
  • 事業困難度
    • 事業所の立地状況や施設の所有形態によって、措置を講ずるための機器や人材の確保、設備の整備等の困難度
  • ・費用・負担の程度
    • 措置を講ずることによる費用・負担の程度
  • ・企業の規模
    • 企業の規模に応じた負担の程度
  • ・企業の財務状況
    • 企業の財務状況に応じた負担の程度
  • ・公的支援の有無
    • 措置に係る公的支援を利用できるかどうか

事業主に「過重な負担」がかかる場合は、事業主と障がい者の双方で十分に話し合った上で措置を取ることが大切です。

4.対象となる障害者は?

障害者雇用促進法の第2条第1号において、「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他の心身の機能の障害があるため長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」が合理的配慮の対象とされています。
障害者手帳所持の有無や、週所定就業時間などの限定はしておらず、長期にわたり就業生活に制限や就業生活が著しく困難な人であれば、合理的配慮の対象者に含まれます。

5.合理的配慮を提供するには?

合理的配慮の内容や程度は、職場環境や障がい特性によってケースバイケースです。以下の4つの流れを参考に、お互いが納得できるまでよく話し合いましょう。

  1. ①採用時に、どのような配慮が必要か時間を設けて申告してもらう。
    障害者手帳、受給者証、医師の診断書なども確認する。

  2. ②会社としてどこまで配慮できるか、できない場合はなぜできないか、
    どこまで配属部署に伝えるかについて、よく話し合う。

  3. ③情報共有や引継ぎに関するルールをつくり、サポートできる担当者を置く。
    同じ部署の社員にフォローを依頼するなど、相談しやすい体制を作っておく。

  4. ④面談を定期的に行い、配慮内容の見直しを行う。

具体例としては、

  • ・個別に時間差通勤を認める。
  • ・声をかける際は、自分の名前を名乗ってから話しはじめる。
  • ・タブレットなどで筆談をする。
  • ・必要な備品や書類をデスク周辺に配置し、移動を減らす。
  • ・いつでも横になれる休憩スペースを確保する。
  • ・音や光に敏感な場合は、作業に集中しやすい環境を作る。
  • ・相談できる担当者を決め、課題をすぐ解決できるようにする。

などがあげられます。
注意すべきは、このような配慮にかかるコストと、障がい者に対する評価のバランスです。本人と事前にしっかり話し合うことはもちろん、人事評価制度も個別に見直すなどの仕組みづくりが必要です。

6.罰則はあるか?

罰則規定等は設けられていません。障がい者が継続して勤務できることが最重要との考えから、提供義務などに違反した事業所に対しては、罰金を科すのではなく、助言や指導、勧告といった行政指導が入り、雇用管理の改善が促されます。

7.まとめ

合理的配慮のポイントを解説してきました。職場における差別を無くすため、合理的配慮が義務化され、障がい者とともに働くために必要不可欠な知識であることがお分かりいただけたのではないかと思います。大切なのは、丁寧に合意形成を図ることです。できること、できないことを率直に出し合い、気持ちよく働ける職場環境に向けて、協同して取り組んでいきましょう。

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