聴覚障がい者を採用する前に知っておくべきこととは?

こんにちは。サンクスラボ株式会社 サテライトラボ担当の久米川です。

もし、あなたが障がい者雇用の担当者になったばかりなら、今後採用していく障がい者の方がどのような特性をもっているのか、それによって必要な配慮は何かなど、わからない点がたくさんあるのではないでしょうか?

今回は、聴覚障がいを持った方を採用するケースを想定し、企業側が知っておくべき聴覚障がいの概要や、コミュニケーションのとり方、定着に向けて押さえておくべきポイントをまとめました。事前に理解を深めることで、採用活動をスムーズに進めていきましょう。

1.聴覚障がいの基礎知識

まず、聴覚障がいとはどのようなものなのか、全体像をおさえていきましょう。細かい内容もありますが、内容そのものより、さまざまな特性があることを理解していただければと思います。

1‐1.聴覚障がいとは?

聴覚障がいとは、外部の音声情報を大脳に送るための部位(外耳、中耳、内耳、聴神経)のいずれかに障がいがあるために、音が聞こえにくい、あるいは聞こえなくなっている状態のことをいいます。

聴覚障がいの原因は、先天性(聴覚組織の奇形や妊娠中のウイルス感染など)と、後天性(突発性疾患、薬の副作用、頭部外傷、脳腫瘍、騒音、高齢化など)の大きく2つに分かれます。

聞こえの程度は、測定器を使って検査されます。正常であれば0デシベル付近、通常30デシベル以上が軽度難聴、50デシベル以上が中度難聴、70デシベル以上が高度難聴、100デシベル以上がろうと、難聴の程度が強くなるほど数値も高くなります。

1‐2.聴覚障がいの等級と分類

身体障害者福祉法では、両耳の聴力レベルが70デシベル以上から聴覚障がいと定義され、身体障害者手帳の交付が受けられます。『平成25年版障害者白書』では、聴覚障がい者・障がい児合わせて約30万人(聴覚障がいのみ)と報告されています。

聴覚障がい者を分類・定義することは非常に難しく、また各人がどれに該当するかは、聞こえの程度や個々人のアイデンティティにも関係するので判断が難しいところです。現状ではどのように等級の区分や分類がされているかご紹介します。

《等 級》

2級

両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)

3級

両耳の聴力が90デシベル以上のもの

(耳力に接しなければ大声語を理解し得ないもの)

4級

1.両耳の聴力が80デシベル以上のもの

 (耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)

2.両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの

6級

1.両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの

   (40センチメートル以上の距離で発声された会話語が理解し得ないもの)

2.一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの

出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」

聴覚障がいのみの場合は、1級、5級の基準はなく、最も重度なものでも障害者程度等級は2級までです。ろう(あ)者は、言語障がいが加わると、1級に認定される場合があります。

実際の等級認定は各自治体や医師が個別に判断するので、同じ等級であっても聞こえ方がおなじというわけではありません。6級の方は、補聴器を用いることで、企業側の配慮を必要としないケースもあります。

《分 類》

聴覚障がいは、聞こえの程度によって、ろう(ほとんど聞こえない状態)と、難聴(聞こえ難さが残るものの、聴力は残っている)に分けられます。また、生まれつき、もしくは音声言語を獲得する前に失聴し、手話を第一言語とする方はろう者、音声言語を獲得した後に失聴した方は中途失聴者に分類されます。中途失聴者は広義の難聴者に含まれる場合もあります。難聴を大きく分けると伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴の3つです。

伝音性難聴

外耳から中耳の音の振動を感じる部位に障害があることで、音が内耳に到達しにくいため、聞こえにくくなる障害です。耳をふさいだ時のような聞こえ方で、補聴器の着用や治療で聞こえが改善する方もいます。

感音性難聴

内耳(蝸牛と有毛細胞)が正常に機能していないため、聞こえにくくなる障がいです。以前は、「神経性難聴」と呼ばれていましたが、今日では、ほとんどの場合、聴神経ではなく内耳に原因があることがわかっています。人の声が歪んだり響いたりして聞こえることが多く、補聴器などで音を大きくしても正確に言葉を聞き取ることが困難な方もいます。

混合性難聴

感音性難聴と伝音性難聴の両方の症状がみられる難聴です。つまり、外耳または中耳、および内耳の両方に損傷がある難聴です。

1‐3.聴覚障がい者のコミュニケーション方法

聴覚障がい者は、聞こえの程度や難聴の種類、失聴時期などが人によって様々なため、それに合わせたコミュニケーション方法が必要です。主なコミュニケーション方法として、口話、筆談、手話の3つがあります。

口話

聴覚障がい者が、相手の口の動きを読み取って言葉を理解し、発話(口の形と音声)で伝えたい言葉を表現する方法です。日本語を十分に習得している聴覚障がい者で残存聴力があり、音声も聞くことができる難聴者に効果があるコミュニケーションの一つです。

筆談

文字を書いてコミュニケーションを行う方法です。紙に書くほか、手のひらに指で書く、空書きなどがあります。相手が言語概念を十分に習得しているか、習得していないかを見極める必要があります。

手話

手指の動作と顔の動きによって表現されるコミュニケーション方法です。主に日本手話日本語対応手話があります。

  • 日本手話

    主に日本のろう者が使う手話です。手や指、腕だけでなく、

    顔の表情や眉・口・頬・舌・首の動きなど(非手指動作と言います)が

    重要な文法要素となり、日本語の文法とは大きく異なります。

  • 日本語対応手話

    健聴者が学ぶことの多い手話です(中途失聴者も用いる)。

    日本語の文法に合わせて、手話単語を並べて表現します。

ろう者にとっては、手話が第一言語となるので、日本語の認識が健聴者と異なる場合があります。また、若いうちに失聴していると、習得している語彙が少ない場合があり、表現の幅は狭まります。例えば、「切ない」「心苦しい」「くやしい」といった複雑な感情を、ストレートに表現するしかないので、健聴者によっては、きつく聞こえることがあるかもしれません。

2.聴覚障がい者とともに働くために

聴覚障がいについて概要をおさえたところで、後半は雇用をする上でのポイントについてまとめていきます。

2‐1.採用活動におけるポイント

「1‐3.聴覚障がい者のコミュニケーション方法」でもお伝えしたように、障がいの程度や種類に合わせたコミュニケーションが図れるように準備をしておきましょう。

筆談による対応

紙やメールでのやりとりの他、電子メモパッドやタブレットなどの電子機器も有効です。

口話での対応が可能な場合

口話でコミュニケーションを図る場合は、口の動きがわかりやすいように、大きくはっきりと動かすようにします。ただ、ゆっくり話しすぎると逆にわかりづらくなってしまうので注意しましょう。

手話での対応

手話ができる人材がいれば、採用面談の際に同席してもらうとよいでしょう。

選考では、お互いができること、できないことを出し合い、納得のいく職場環境がつくれるように努め、定着に繋げていくことが重要です。

2‐2.業務でのコミュニケーションのポイント

業務をスムーズに進めるためには、コミュニケーションでの配慮が不可欠です。障がい特性によって、対応方法に気を付けましょう。

まずは、本人がどのようなコミュニケーション方法を望んでいるか把握します。聴力によって受け取る情報が少ないので、情報不足で支障が出ていないかフォローする体制も整えておきましょう。また、必要があれば、本人同意の上で取引先に障がいについて伝えておくと、認識のずれを防ぐことができます。

筆談がメインの場合

伝達事項はなるべくメール・チャット・書面にする

呼び止める際は肩をたたく/手を上げる

口話がメインの場合

業務に関わる事項は、口頭ですまさず、メール・チャット・書面にする

音声会話がメインの場合

会議では発言者の近くに座ってもらう。大きな声ではっきり話す

2‐3.聴覚障がい者に任せる仕事の一例

聴覚障がい者は、顧客や取引先と直接、音声でコミュニケーションをとらなければならない業務以外は従事できる範囲は広いです。下の例に限らず、会社にあった業務を担っていただきましょう。

  • 軽作業(倉庫での在庫管理・メール便の管理など)
  • 管理部門(人事・総務・経理部門でのデータ入力・名刺作成・備品管理・伝票管理など)
  • 経営部門(企画営業・マーケティング部門における数値管理・資料作成・リサーチなど)
  • IT部門(ステム開発・保守運用・プログラミング業務など)
  • デザイン部門(HP更新管理・Webデザイン・DTPデザイン業務など)

3.まとめ

聴覚障がい者を雇用する前に知っておくべきポイントを整理してきました。一口に聴覚障がいといっても、聞こえの程度は人それぞれであることがお分かりいただけたかと思います。採用される方の障がい特性をよく理解し、その方にあったコミュニケーションのとり方、業務の進め方、働きやすい環境整備について考え深めるきっかけにしていただければと思います。

まずは、社内で聴覚障がいをはじめとした障がい全般に対する理解を深める取り組みからはじめていきましょう。既存社員の障がい者雇用に対する取り組み姿勢が、先々に雇用する障がい者に伝わっていきます。

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